雇用統計でドル円が大きく値動き

 米5月雇用統計が発表されましたが、非農業部門の雇用者数が前月比+3.8万人と市場予想の+16.0万人を大きく下回る結果となってしまいました。最近の報道では、6月か7月にFRBの利上げが行われるのではないかという見方が大半だっただけに、市場にとってかなりのネガティブインパクトになったようです。

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 日本時間の21:30に発表されましたが、それまでは108円後半で推移していたドル円相場が106円中盤まで下げています。雇用統計が軟調になったことで金融政策を引き締める根拠が弱まったとの指摘もでてきました。

非農業部門雇用者数とは

 これは農業以外で働く人たちの人数のことで、企業の給与支払い帳簿に記載されている雇用者数をカウントしています。労働者の権利が比較的強い日本とは違い、アメリカでは企業の業績が悪化するとすぐに雇用調整によって人を減らす傾向があります。このため、企業の景況感と雇用者数の連動性がとても高くなっています。「非農業部門の雇用者数は景気動向を敏感に反映する」と言われる理由です。

失業率は改善したものの

 失業率は前月から0.3ポイント下がって4.7%に改善しました。これはリーマンショック前の2007年11月ぶりの低水準なのですが、ドル円相場を見るかぎりドル高の歯止めとなっているようには思えません。これは失業率の算出方法に原因があります。

 失業率は次の数式で算出されています。

  • 失業率 = 失業者数 ÷ 労働力人口

実は、この失業者数のなかには就職活動をしていない無職の人は含まれておりません。何社も面接を受けても採用されず、就職活動をやめてしまった人は失業者としてカウントされていないわけです。

 このままだと就職状況を正しく把握することができないので、「就業者率」という指標を使って補足することになります。就業者率は次の数式で算出されます。

  • 就業者率 = 就業者の人数 ÷ 生産年齢人口

生産年齢人口とは働ける人のことを指しており、アメリカでは16歳以上で入院患者・自宅療養者・軍人・囚人などを除いた人数になります。就業者率は働ける人のうちどのぐらいが職を得ているのかを表わしています。ここには就職活動を諦めてしまった失業者も含まれています。

 それではアメリカの労働省のホームページから就業者率を確認してみます。
米労働省HP

トップページに検索窓が設置されているので、ここに「Employment to Population Ratio」と入力して検索します。

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2007年11月の就業者率を確認してみると62.9%となっており、今回発表された59.7%よりも数値が良かったことがわかります。失業率の数字は同等であるものの、求職をやめてしまっている人が多いことがわかります。

 FXの解説サイトなどでは労働参加率とあわせて分析するべきと指摘しているところもあるので、こちらも確認しておきましょう。検索窓に「Labor Force Participation Rate」と入力。

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こちらの数字も悪化しており、2007年11月ほど失業率が改善していないことが確認できます。

 裏を返せば、経済状況が好転すれば職探しを諦めた人が労働市場に帰ってくることもあるので、好景気なのに失業率が上がるなんてこともあり得るわけです。失業率の数字については、その中身を確認することを忘れないようにしてください。
米雇用情勢について
雇用統計

今後どうなるか

 アメリカ時間の6日にはイエレンFRB議長の講演が予定されており、現在の為替相場は講演待ちで小幅な値動きになっています。6月の利上げはまずなくなったと予想されていますが、7月の利上げの可能性はまだなくなっていないために様子見が大勢を占めているようです。

 発言によっては大きく値動きすることもあり得るので、しっかりとしたリスク管理を意識してポジションを構築するよう心がけるようにしましょう。

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お酒ばっかり飲んでいるけれど、私はげんきです。

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