オリンピック後のブラジルに投資しても大丈夫なのか?

 5日にブラジルのリオデジャネイロでオリンピックの開会式が開催されました。南米初のオリンピックということで話題になっています。体操、柔道、水泳などで日本選手が活躍したことで金メダルを獲得し、連日大きく報道されています。

 同時に想像を超える治安の悪さもニュースになっています。外国人観光客の乗っているバスがバスジャックにあったり、選手村のデンマーク選手団の客室からスマートフォン、iPad、衣類などの窃盗事件が起こっています。

 南アフリカでサッカーのワールドカップが行われたときにも、治安が悪いので観戦に行った人たちは無事に帰ってこれないのではないかなどとネットで話題になりましたが、窃盗だか強盗が数件あっただけだったので、今回も大会が始まってしまえばなんとかなるだろうぐらいに考えていたのですが、予想をはるかに上回る治安の悪さにびっくりです。ジカ熱や豚インフルエンザといった伝染病の心配もありますので、現地に観戦に行かれる方は十分に注意なさってください。

ブラジルの産業

 かつてのブラジルは農産物が産業の中心でしたが、政府による経済発展計画の導入や大規模な補助金などにより工業化を実現しました。現在では多数の外資系企業が進出したことで、多様な産業がブラジル経済を支えています。主な産業は次のとおりです。

自動車

 ブラジル政府は国内市場保護のため、自動車の車体や自動車部品の輸入に高い関税を課しています。このため、多くの海外メーカーはブラジル国内の工場で現地生産を行っています。世界第4位の市場規模を持ち、最近では景気対策として自動車関連の減税が行われたこともあり、自動車販売台数は高い伸びを続けてきました。

航空機

 航空機はブラジルの主要輸出品のひとつです。ブラジルの航空機メーカーであるエンブラエル社は、2012年の中小型旅客機における世界シェアの実に43%を占めます。ブラジル空軍の軍用機を製造する国営企業が1994年に民営化、日本航空にも採用された実績があります。

鉄鉱石

 ブラジルはオーストラリアと並ぶ2大鉄鉱石輸出国です。総合資源開発企業であるヴァーレ社が中核を担っており、鉱物資源の開発・生産・流通において重要な役割を果たしています。2014年の同社の販売先の約34%を中国が占めています。

農作物

 工業化の成功に伴いGDPに占める農林水産業の割合は低下したものの、世界第5位の国土面積を活用してコーヒー豆、さとうきび、オレンジで世界1位の生産量を誇ります。

 ブラジルは2013年から14年にかけ高温と干ばつの影響で食料品価格が急騰しました。これがインフレ率を引き上げた一因になっていましたが、2015年になり散発的ながら降雨がみられますので、食料品価格が落ち着くと予想されています。レアル安によって輸出競争力が期待できるところです。

石油

 ブラジルはベネズエラに次ぐ南米で第2位の石油生産量を誇っています。中核を担っているのはペトロブラス社ですが、最近の同社はリベートを乗せた水増し契約や政治家への違法献金、マネーロンダリングなどで揉めに揉めています。

 ブラジルの石油はほとんどが海底油田から産出されており、採掘コストが割高になっています。加えて、ブラジル国内に重質原油を処理する石油精製設備を持っていないため、石油輸出国であると同時に軽質原油を輸入する石油輸入国でもあります。どろっとした原油をそのまま給油しても車を走らせられないわけです。

 このため、ブラジルは石油産出国でありながらガソリン価格は高めです。ブラジル政府は対策として、ガソリンを管理価格としています。原油価格が高くても安くてもガソリンの価格は常に同じというものです。このしわ寄せはペトロブラスへと向かい、同社の収益を圧迫し続けてきました。現在、原油価格が世界的に低迷を続けることで同社の収益はいくぶん改善されたようです。原油価格の下落はペトロブラスの収益にとって好影響をもたらしましたが、ガソリンの管理価格制度によって原油安の恩恵を国民は受けることができず、これもブラジルの高インフレ率の一因となったようです。

 また、石油生産からの収入を期待していた地方自治体の減収といった影響もではじめています。ブラジルの石油埋蔵量の実に80%がリオデジャネイロ州の沖合いにあるのですが、リオ市はこの沖合いの石油生産から得られるロイヤリティ収入を当てにしてオリンピック計画を進めていました。このロイヤリティは原油価格に連動するため、思わぬ減収で地元は大苦境に陥りました。先日、競技用のプールが一夜で緑色になるトラブルが起きましたが、最後まで無事に大会が行われることを願うばかりです。

FXでブラジルレアル

 かつてはブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の頭文字をとってBRICsなどと呼ばれ、成長率が頭打ちになったと言われる先進国に代わって有望な投資先として期待されていたブラジルですが、最近では景気後退と物価高騰が同時に進行するスタグフレーションが深刻化しています。

 楽天証券のブラジルレアル/円チャートを見てみると、2008年のリーマンショックをきっかけに急落、40円を底に若干の反発をしていましたが、2015年にはいって40円を割り込んで30円まで価格を下げています。

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 高金利通貨としてFXで人気のある南アフリカランドやトルコリラなどに比べ、ブラジルレアルを日本国内で扱っているのはIG証券さんだけです。BRICsで大騒ぎしていた割に、他のFX会社が取り扱っていなかったのは意外です。

 政策金利が14.25%というFXとしてはとても魅力的なブラジルレアルですが、昨年の9月にブラジルのCDSは540bpにまで上昇しました。CDSの上昇というと国債のデフォルトを連想してしまいますが、ブラジルはルラ前大統領時代に海外からの借金をレアル建て国債に借り換えを進めています。結果、政府の借金の95%がレアル建てになっており、レアルの価値が下がったからといってすぐに通貨危機になるわけでもなく、今回の500bp突破は根拠がよくわからないと一部メディアは指摘しています。

 強いて言えば、インフレ率が高めなため景気後退局面であっても金融政策を行うことができないことでしょうか。先進各国はリーマンショック以降の景気後退に対して金融緩和を行ってきましたが、これはインフレ率が低く通貨価値が高かったからこそできたことです。2016年3月にブラジル地理統計院が発表した物価上昇率は9.4%と高く、レアル安が進行しているブラジルでは輸入品の高騰を引き起こしかねない金融緩和は難しいと考えられます。

 予算の不正執行の疑いのあるルセフ大統領の弾劾の手続きが下院で承認されたことを受けてCDSは340.7bpまで低下しましたが、ブラジルの政治腐敗もかなり深刻です。オリンピック開催前にルセフ大統領の退陣を求めるデモが報道されたのも記憶に新しいところです。最近では、国営の大手石油会社ペトロブラスをめぐる巨大なマネーロンダリングや収賄に対する過去最大の汚職捜査の真っ最中でして、ルセフ大統領やルラ前大統領をはじめ、ブラジルのビジネスリーダー、政治家の多数がこのスキャンダルに巻き込まれています。

 資源価格が低迷しているのはブラジル経済にとって厳しいですかね。鉄鉱石・石油はブラジルのバブル経済を支えていた輸出品ですが、どちらも中国の需要減と過剰供給で世界中で被害が出ているものですからね。ブラジル政府の経済発展計画によって工業化は実現しているので、レアル安自体は輸出品の競争力に貢献してくれると思うんですが、仕込み時か様子見か悩むところです。

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