中国の経済失速は落ち着いたのか

 IMFは2016年、2017年の世界経済の成長予測を共に引き下げました。IMFのチーフエコノミストのモーリス・オブストフェルド氏は「世界経済は疲弊して久しい。世界の政策決定者にとっては過ちが許される余地は狭まっている」と指摘し、これに対応するには各国政府が協力する必要があると提言しています。

 同時に、日本については来年に予定されている消費増税が経済成長を抑制する見方を示したこと、中国については内需とサービス業の成長が製造業の鈍化を補うとしたことで、中国メディアの幸福投資網は「中国が唯一の光で、日本が最悪だと評価された」と報じています。
IMFが世界経済の見通し発表、「中国が唯一の光、日本は最悪」―中国メディア

 実際に、いくつかの指標では中国の経済失速が下げ止まったかのような数字がいくつかではじめてきています。3月のドル建ての輸出が前年同月比11.5%増となり、2015年6月以来に9ヶ月ぶりにプラスに転じたと中国税関総署は発表しています。輸入こそマイナスでしたが、伸び率は2015年2月以降で最大となっています。
中国輸出、3月は前年比+11.5% 15年6月以来のプラス

 また、国家統計局が15日発表した1-3月期のGDPは前年同期比6.7%増となっています。3月の工業生産は前年同月比6.8%増、同じく3月の小売売上高は同10.5%増、1-3月の都市部固定資産投資は前年同期比10.7%増であるとしています。
中国:1-3月GDP、景気安定化を示す-持続性には疑問も

 これに加えて、中国政府は経済の活性化を図るために、日本円で8兆円規模の減税を行う方針を明らかにしました。これは、これまでサービス業の一部の業種で試験的に進めてきた税制改革の範囲を拡大するものです。

中国 経済活性化 8兆円規模の減税実施へ
中国政府は12日の記者会見で、これまでサービス業の一部の業種で試験的に進めてきた税制改革の範囲を拡大し、来月からは金融や不動産、それに建設業などを対象とする方針を明らかにしました。具体的には事業者が提供する商品などに課税する場合、これまでは商品自体の売り上げに加えて、その材料など中間業者の売り上げにも、そのつど課税されていましたが、付加価値税に切り替えるということです。

 このニュースについて述べる前に、日本の消費税の仕組みについて少し触れておきたいと思います。こちらの説明がわかりやすかったです。画像もお借りしてきました。
第1章 消費税の仕組みと体系 トップ- 【原則1.2.3】

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 まず、問屋さんは小売店に書籍を6000円で売り、消費税を300円預かります。小売店は消費者に10000円で書籍を売り、消費税を500円預かります。問屋さんは300円を消費税として国に納めます。小売店が納める金額は、消費者から預かった金額から問屋さんに支払った消費税額を差し引いた500-300=200円を納めることになります。これが日本の消費税の仕組みです。

 これに対し、中国の今までの金融や不動産、建設業などへの税制とは、商品自体の売り上げに加えてその材料など中間業者の売り上げにもそのつど課税するものだったようです。先ほどの例で言えば、小売店が500円納税すると考えればよいのでしょうか。バブル経済を抑制するためだったと想像しますが、すごい税金の取り方しますね。

で、本当に大丈夫なの?

 いくつか改善の兆しが見えはじめたかに見える中国経済ですが、では経済失速に本当に歯止めがかかったのかというと少々怪しい気配を醸し出しているように感じます。市場予想を大幅に上回る形でプラスに転じた3月のドル建ての輸出ですが、エコノミストからはベース効果や季節要因が影響したとの指摘があります。

 また、香港からの輸入が前年比116%増と予想外に増加しましたが、これは表向きは輸入取引であると言うものの、実際には元建て資産からの資本流出を示している可能性があるとも指摘しています。

 全人代の頃にニュースを取り上げましたが、賃金未払いなどに抗議する労働者によるデモやストライキの頻発についても気になるところです。「鬼城」と呼ばれる人が住んでいないゴーストタウンを乱立させた建設業界や、「石炭はジャガイモよりも安くなった」とまで言われる鉱山労働者についても心配です。

 特に、過剰供給状態である鉄鋼製品を無理矢理輸出していることで、世界中の鉄鋼製品の価格が下押しされる原因となっていることから批判の的となっています。これを解消するためには、中国の鉄鋼業界に大規模なリストラを行う必要があると言われており、頻発する労働争議とあわせて深刻な問題を引き起こしかねません。
【真・人民日報】ポスト習世代の党幹部が失言 激怒した炭鉱労働者は“蜂起” 不穏な中国

中国「日本よ、安心して中国に投資しろい」

 以前から人件費の上昇などを理由に中国から東南アジアなどへのシフトが進んだことで、日本企業の対中投資は手控えられる傾向が続いてきましたが、深刻な経済失速を解決するために日本からの投資を呼び起こしたい思惑があるのかもしれません。

 日本企業の対中投資が減少している背景について、中国メディアの中国網は「日本の書店で中国崩壊論の本がたくさん出版されているからだ」と指摘しています。中国は今後さらに巨大な市場へと成長するから、正しい情報に基づいて判断を行うように、と呼びかけています。
中国崩壊論なんて嘘だから!日本企業はわが国に安心して投資せよ=中国

 でもねぇ。いくら自衛隊が熊本地震で手がいっぱいだからといって、これはイカンでしょ。別の報道では自衛隊戦闘機がスクランブル発進したとの報道まであります。これは今日のニュースです。
尖閣諸島周辺に中国船3隻 3日連続で確認

市場の大きさはものすごい魅力的なんですけどね。いっそのこと、民主化してくれないかな。

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