イギリスはEUを離脱するのか?

 19日、EU(欧州連合)はブリュッセルで首脳会議を開き、イギリスのEU離脱を回避するための改革案について全会一致で合意しました。EUが大幅に譲歩したようで、イギリスのキャメロン首相は首脳会議後の記者会見で「EU内で英国の特別な地位を勝ち取った」と発言しています。

 合意した改革案の中身ですが、イギリスに対して通貨ユーロを適用しないことの再確認、EUの政治統合にコミットしない特別の地位を認めるなど、かなりイギリスにとって有利な内容となっています。また、イギリス国民の不満が強い移民に対する福祉の支払いを条件付きで制限することも合意されています。

EU離脱か残留か、イギリス国民投票の衝撃度

 キャメロン首相はEU離脱の是非を問う国民投票を行うことを公約に当選していますが、今回EUから譲歩を勝ち取ったことで国内のEU離脱派をどこまで抑えられるのかが注目されます。投票の日程として有力視されているのは今年の6月23日のようです。

EU、英の離脱回避へ合意…移民制限など譲歩
EU首脳会議 イギリス離脱防止へ改革案協議

 本来ならお手柄のキャメロン首相のはずなんですが、同じ保守党で次期首相の有力候補とされるボリス・ジョンソン・ロンドン市長が21日にEU離脱を求める運動を展開すると表明しています。そればかりか、キャメロン首相の政治的盟友のひとりであるゴーブ司法相までもが20日に離脱支持を明らかにしており、国民投票に向けて予断を許さない状況です。

ロンドン市長が英国のEU離脱キャンペーンへ-首相に打撃

 今回のEU離脱に関するニュースのせいで為替市場でポンドが急落しており、リーマンショック後の水準にまでかなり接近してしまっています。日本の株式市場と同様に、原油価格の下落による中東のオイルマネーの流出がポンド下落に拍車をかけてしまっているようです。

英国はEUを離脱するのか?

 イギリスと言えば金融業ですが、イギリス金融の中心地となっているのがロンドンの一区画にあるシティと呼ばれる自治都市です。この自治都市の歴史は非常に古く、1189年にリチャード1世が即位したときにはすでに自治都市として国王と交渉した記録が残っています。

 また歴史的に国王と対等の政治的権利を有しており、現在でも金融に関する自治権においてはロンドン市の定めた規則に従わなくてもよいことになっています。エリザベス女王が在位50周年記念式典でも、シティから会談の申し入れがあったら首相は10日以内に、女王は1週間以内に応じなければならないという規則がいまだに残っています。

 このようなイギリス議会でさえ口を出すことができない強力な権限と、ヴァチカンをも上回ると言われる保有資産、旧植民地などのタックスヘイブンの重層的なグローバルネットワークにより、2008年のデータでは国際的な株式取引の半分、店頭デリバティブ取引の45%近く、ユーロ債取引の70%、国際通貨取引の35%、国際的な新規株式公開の55%を占めるほどのグローバル金融のハブとして圧倒的な強さを誇っています。

金融立国イギリスの中心地・シティがウォール街に対抗できる理由

 EU内にシティに代わるだけの金融センターがないこと、英語圏で地理的に利便性が高く政治的に安定していることなどから、イギリスはEUの進出拠点のひとつになっています。また、技術力の割りに欧州諸国と比べて製造業の人件費が割安であり、貿易の半分は対EUが占めています。

 仮にEUを離脱した場合には関税が復活するので、対EU貿易に影響が及ぶ可能性は高いです。独自通貨であるスイスやノルウェーなどのように、他のEU諸国との間で自由貿易協定を結べば関税面の問題はクリアできますが、資金流出によりイギリス金融業がダメージを受ける可能性もあります。

 また、親EU色の強いスコットランドやウェールズがイギリスから離脱してEUに加盟する動きを強める恐れがあり、英国政府の資産や債務の配分方法や北海油田の原油収入が見込めなくなることから、イギリス経済が混乱をきたす可能性もあります。

 まだまだ移民に対する社会保障などの問題が残ってはいるのですが、今回キャメロン首相がEUから大幅に譲歩を引き出したことで、イギリスが慌ててEUを離脱するメリットがあまりないように感じます。特に世界的に経済状況が芳しくない間は、世界金融のハブとしても騒ぎを大きくしないでいただきたい。離脱をめぐる国民投票によりどうなるかわかりませんが、なるべくソフトに決着をつけてもらいたいものです。

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