鴻海が調印を延期したけど本当にシャープが悪かったの?

 政府系ファンドの産業革新機構と台湾の鴻海精密工業のどちらがシャープを買収するかが話題となっておりましたが、25日の取締役会において鴻海から支援を受けることが正式決定されました。7000億円の出資額、銀行の債権放棄は不要、経営陣の温存が決め手でしょうねぇ。

シャープ再建、鴻海に決定 株式の過半数取得へ

 これにて一件落着かと思いきや、25日夜に鴻海さんサイドからこれまでに明らかにされていなかった偶発債務の存在が判明したとの発表がなされます。

シャープ、数千億円の偶発債務判明 鴻海買収調印保留=関係筋

 これにより、鴻海は買収契約に関する調印を延期することを決定しました。どこかで読んだんですが、25日という期限は資金繰り的にギリギリのラインだったと思うんですが、大丈夫なんですかね。

鴻海「シャープとの調印は当面見合わせる」

デューデリジェンスとは?

 デューデリジェンスというのは、企業が合併や買収をする前に投資対象の財務状況などを精査することを言います。企業買収には大きなお金が動くので、買収先が投資対象として本当に大丈夫なのかをきちんと調べるのは当然のことです。

 デューデリジェンスは企業の財務状況を確認するだけでなく、買収先が締結した契約や取引行為が法的かつ適正に遵守されているか、法人税や法人事業税などが適正に申告納税されているかどうかなど、法律や税金の側面からも調査をします。これには会計士や弁護士などの専門家を交えて行います。

企業の資産価値を測る6種のデューデリジェンスを解説

 鴻海も今回の世紀の大型買収の前にデューデリジェンスを行ったことでしょう。

偶発債務とは?

 今回鴻海が調印を延期した理由は、「24日に新たな重要文書を受け取った」とあり、その中に将来現実化する恐れのある約3500億円の債務リストを精査しなければならないからであると報道されています。これはどうやら「偶発債務」のようです。

 偶発債務とは、現在は発生していないが将来何らかの事態が起きたときに負わなければならない債務のことを指します。例えば、賞与引当金のように「いつ」「いくらぐらいの金額」の出費があるとわかっているものは、財務諸表の負債としてきちんと計上されています。

 これに対し、裁判での賠償金や和解金のように、将来的に損失になるだろうけど「いつ」・「どのぐらいの金額」になるかわからないような出費などがあります。これを「偶発債務」と呼び、負債として計上はしませんが有価証券報告書に注記として記載する決まりになっております。

偶発債務のわかりやすい説明はこちらをおすすめします。

シャープの抱えていた偶発債務とは何か簡単にまとめてみる

この先、どうなるんでしょうか?

 大型買収の前には専門家も交えてデューデリジェンスを行うこと、偶発債務については有価証券報告書に記載する決まりがあることから、今回の鴻海の調印の延期は後だしジャンケンのようなイメージを抱いてしまいます。東芝やオリンパスのような例もあるのでシャープが絶対に粉飾決算を行っていないとは言えませんが、産業革新機構のチェックに引っかからなかったことと併せて考えても、鴻海が交渉を有利にしようとするための策なのかな、という疑いを捨てきることができません。

 経済に強い有名ブロガーの方々も今回の鴻海の買収延期について懐疑的に見ているようです。

偶発債務を確認するのがM&Aの基本。鴻海・シャープ買収で思うこと。
シャープの「偶発債務」問題は、別にシャープが悪いわけではないですよ

 そもそも、デューデリジェンスという言葉は英語のDueとDiligenceが組み合わさったものであり、「当然なされるべき努力」という意味を持っています。鴻海ががんばって調べなければならないものであり、契約の直前になって慌てるような話ではないではないでしょうか。だって調べた結果、今回の買収金額に決めた訳でしょ?

 そんなこんなでゴタゴタやっているうちに、産業革新機構がシャープの買収案件から降りてしまいました。東芝の家電部門との統合についても白紙に戻るようで、両者を競わせて有利な条件を引き出すことは今後できなくなりました。シャープさん、買い叩かれちゃうのかな・・・。

革新機構が撤退表明 シャープ・東芝支援

 鴻海の郭台銘会長は以前シャープへの出資で合意しながら取りやめたことなどが理由により信用できないなどと言われたりしていますが、今後シャープは鴻海とのサシでの交渉になります。郭台銘会長は中国との関係が深く技術流出などへの懸念もあり、今後の動向にも注目です。

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