三菱自動車は大丈夫なのか(直球

 三菱自動車が軽自動車の燃費データで不正を行っていた問題ですが、当初は4車種でデータを改竄していたとの発表でしたが、実際にはミラージュ、デリカD:5、アウトランダーPHEVの3車種を除いた27車種で不正を行っていたと22日に発表しました。26年度までの国内販売台数は200万台を超えると報道されています。

 記者会見や公開資料によれば、道路運送車両法で定める方法とは異なる方法で燃費試験用データを測定していたとのことです。また別の報道によれば、一部車種では走行実験すら行わずに社内の燃費目標にあわせる形で走行抵抗値を机上で捏造していたことも発覚しています。
国交省、燃費試験見直しへ 不正27車種200万台

 さらに悪質なことに、1991年から法令と異なる試験方法で燃費データを計測していたことが発覚、25年前から不正が行われていたことに対して、ネットでは批判の声が止まらない模様です。2000年の死傷事故を引き起こしたリコール隠しをはじめとして、三菱自は過去に何度もの不正行為を行っており、厳しい言い方をするなら隠蔽することが企業体質であるように思えます。

 相川社長は「2012年以降、コンプライアンス(法令順守)を社内に浸透させてきた」と話しているようですが、その言葉に説得力がないばかりか、技術畑出身で2001年発売の初代eKワゴンの開発責任者などを務めたことを考えれば、自身が主導で隠蔽を行ってきたのではないかと疑われても仕方のないことだと言えます。
三菱自、1990年代から燃費不適正検査か 数十車種で
三菱自動車、燃費不正「25年前」から! 「車造りをやめろ」の声が止まらない
三菱リコール隠し
121万台のリコール、懲りない三菱自動車「経営体質」なのか?
トップへの報告まで5カ月 「物言わぬ風潮」改善されず

 合弁会社を設立していた日産ですが当然怒り心頭なわけでありまして、「責任を取っていただく」と厳しく批判しています。カルロス・ゴーン社長は事実がすべて解明されてから、関係を見直すかどうかも含めて決定を下すと述べています。
「責任取ってもらう」と批判=三菱自不正で日産幹部

 26日には三菱自の相川社長が不正問題の責任をとり、辞任する意向を固めたことがわかりました。以前のリコール隠しで一部経営陣が道路運送車両法違反(虚偽報告)などで逮捕されたことに比べれば、今回の不正は直接安全性の問題に結びつくとは言えないのかもしれません。

 しかし、燃費性能を重要視する軽自動車ユーザーを騙し続けてきたことにかわりはなく、「本当は安全面でもなにかやらかしているんじゃないの?」との不信感を消費者に与えてしまったことからも、経営陣の責任は非常に重いものだと思います。
相川社長が引責辞任へ 燃費データ不正

熱い風評被害

 今回の燃費不正問題が世間を騒がせたせいで、関係のないところで流れ弾に被弾した企業がでてきています。軽自動車の2強のひとつであるダイハツですが、たまたま27日が2016年3月期の決算発表だったことから、不正問題についてコメントを求められています。

 当然ダイハツは「法令順守している」と述べたわけですが、決算自体が売上高7%減、連結純利益が前期比39%減だったことと不正問題の煽りを受けて、明日の株価は叩き売られちゃうんでしょうか。
ダイハツ、16年3月期の純利益39%減 軽販売の低迷響く

 26日から小型トラック「キャンター」の販売を開始した三菱ふそうにいたっては、宣伝文句に燃費向上を謳うという間の悪さです。2003年に三菱自からトラック・バス事業を分社化する形で設立され、現在はダイムラー社が89.29%の株式を保有する子会社として袂を分かっていますが、予定を変更できなかったのは仕方がないにしても、古巣に塩を塗りこむような真似はあんまり感心しないな。
三菱ふそう、小型トラック キャンター を初のモデルチェンジ…燃費向上など

今後の予想

 三菱グループのひとつであるという安心からか、個人投資家界隈ではどこで株を拾うかが話題となっているようですが、株ブログとしては三菱自動車が財務的にどうなのかに触れなければなりますまい。

 三菱自の公式ホームページでは有価証券報告書しか見つけらなかったので、EDINETから第3四半期報告書を漁って引っ張ってきました。

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 今後問題になりそうなのが損害賠償の支払いになると思うので、財務分析的には当座資産で考えればいいのでしょうか。当座資産とは、短期間に現金化できる資産のことをいいます。現金、預金、受取手形、売掛金、短期保有の有価証券などのことを指し、この大きさを見ることで企業の短期的な支払い能力を判断することができます。

 今回該当するのは、流動資産から「現金及び預金」、「受取手形及び売掛金」、投資その他の資産から「投資有価証券」でいいのかな?大雑把に合計すると約7200億円です。実際には土地・建物を売却すればもう少し余力があるのかもしれません。当座資産については以下のページを参考にしました。
当座資産とは
当座資産って何?‐B/Sの「資産の部」って何だろう?(3)
当座比率
投資その他の資産って何?‐B/Sの「資産の部」って何だろう?(9)
投資その他の資産

 さて、おおよその支払い能力が7200億円ある三菱自ですが、まず支払わなければならないのがエコカー減税の追加納税でしょうか。エコカー減税は燃費などの良さに応じ、購入時にかかる自動車取得税、購入時と車検時にかかる自動車重量税を割り引く制度ですが、燃費の再計算でエコカー減税の対象外であることなどが確定した場合、購入者に追加の納税義務を課しています。三菱自はこれを全額負担する方針のようです。

 このほかの顧客への補償としてガソリン代の補償などが考えられ、野村證券の試算によればエコカー減税の返還額などを合わせた対策費用は425億~1040億円であるとしています。

 また、今のところ三菱自はガソリン代の補償を軸に調整を進めていますが、22日の記者会見では石井啓一国土交通相が「買い取りも含めて誠実に対応してもらいたい」と述べていることから、仮に対象車の中心価格の半額65万円ですべて買い取るとすれば、費用は約4000億円になってしまいます。これは当初発覚した4車種の軽自動車についてのみです。

 これ以外にも日産に対する営業補償や、EPA(米環境保護局)が燃費データに関する追加試験を新たに行うよう命じたことから、海外において損害賠償が発生する可能性もあり、補償費用がさらに膨らむこともありえます。
エコカー減税、追加納税へ…100億円超か
三菱自「車両買い取り」なら経営大打撃 対策費は数千億円規模に膨らむ恐れ
三菱自動車、免税認定狙い不正
燃費データ不正 日産に補償、数百億円規模 供給46万台分
米当局、三菱自に追加試験命令

 損害賠償が払える払えないはともかくとして、今回の不正問題により三菱自の信頼性がだだ下がりしたことから、三菱自製自動車の売り上げが下がることは想像に難くありません。2000年に発覚した大規模なリコール隠しにより深刻な販売不振に陥ったことで、過去には約7000億円もの累積損失を抱えましたが、早くも1日あたりの受注台数が半減しはじめています。
三菱自、改ざん公表後に受注半減
121万台のリコール、懲りない三菱自動車「経営体質」なのか?

 かつてのリコール隠し問題では三菱重工や三菱商事などに支援してもらうことで切り抜けてきましたが、投資家の厳しい視線があるなかではさらなる支援は難しいとも指摘され、外部への身売りといった噂まででています。中国メーカーをはじめ、テスラ、アップル、グーグルなんて名前まででてきていますが、どうなるのでしょうか。
燃費不正の三菱自動車 “身売り先”に浮上する本命と大穴

 個人的には一度解体した上で三菱重工が吸収するというのがいいような気はしますが。三菱自動車の沿革を見ると、過去には電気自動車の24時間走行で世界記録達成したことでギネスブックに公認されるなど、EV開発の先駆者として評価されていることもあり、実にもったいない。今回の件を機に企業体質を改善してもらいたいと思います。

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