囲碁AIのブレイクスルーに貢献したディープラーニング

 2016年3月9日~15日に米Googleの開発した囲碁AIが、人間と対局して圧倒的な勝利を収めたことは記憶に新しいかと思います。人間の場合は数手先までを読んでプレーしますが、AlphaGoは桁違いに先を読むことができるので、解説についたプロ棋士もなんでこの手で勝つことができるのか理解できないとのコメント連発するほどです。今回対戦した韓国のプロ棋士は2007年から2011年まで世界ランキング1位の腕前を持つトップレベルの人であったので、AlphaGoがこれからも成長を続けることを考えれば、人間が囲碁で人工知能に勝つのは難しくなったといえるのかもしれません。

 AlphaGoはコンピュータがデータから自分で学習する「機械学習」という分野の研究が利用されています。その分野の中でも、「強化学習」と「ディープラーニング」という技術を組み合わせて実現されました強化学習とはコンピュータ同士を対戦させて試行錯誤を繰り返すもので、教師なし学習とも呼ばれています。ディープラーニングはシステムがデータの特徴を学習して事象の認識や分類を行うもので、画像認識や音声認識によく利用される技術です。

 今回人間に対して圧倒的な強さを見せつけたAlphaGoですが、いくつかの欠点もあります。ディープラーニングが計算コストが非常に高いということです。例えば、2015年に欧州のプロ棋士と勝負した際は、1202台のCPUと176台のGPUで並列処理を行ったとあり、巨大なITインフラを保有する企業が有利であるのは間違いありません。

 もうひとつの欠点として、上でディープラーニングはデータの特徴を学習すると書きましたが、これはデータを抽象化するので人間には読み取れることができず、後から解析することが非常に困難であるということです。第四局でAlphaGoは明らかな悪手を繰り返しましたが、開発チームのメンバーも原因が分からなかったと報じられています。
人間を超えたアルファ碁(AlphaGo)は、どのようにして強くなったのか
圧勝「囲碁AI」が露呈した人工知能の弱点

 ディープラーニングによる機械学習は計算コストが高いと述べましたが、先月にGoogleが機械学習プラットフォーム「Cloud Machine Learning」を公開したので、スマホアプリ開発者のような個人でも画像分析や音声解析を手軽に低コストで利用することが可能になったようです。興味のある方はぜひお試しください。
Googleが自社で使っている「クラウド機械学習」を一般に開放、こんなスゴイことが簡単にできる

人工知能が苦手なもの

 画像認識や音声認識の分野では人間をはるかに凌ぐ精度を誇る人工知能ですが、人間との受け答えを必要とする動作についてはまだ苦手なようです。

 先日、マイクロソフトがインターネットでユーザーと会話をしながら発達する人工知能「Tay」を開発しましたが、一部のユーザーが良からぬ言葉を仕込んだせいで人種差別や陰謀論を繰り返し発言するようになってしまい、公開からわずか一日で停止に追い込まれました。
マイクロソフトの機械学習AI「Tay」、ネットで差別と陰謀論に染まって一日で公開停止
Microsoftの人工知能Tay、悪い言葉を覚えて休眠中
MicrosoftのAIボットTayがTwitterに復帰、再びスパムの大洪水、そしてまた眠らされる

 また、Hanson Robotics社の感情を表現するロボットである「ソフィア」との対話がCNBCで放送されたましたが、コミュニケーションが微妙に噛み合っていないのはともかく、「私は人類を滅亡させます」とコメントしたことによって物議を醸しています。ターミネーターのスカイネットみたい。
笑い飛ばせない……AIロボットが「人類を滅亡させる」と発言

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この子も近い将来こうなってしまうのでしょうか。わかりません。

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 一方、日本マイクロソフトが開発した女子高生AI「りんな」ちゃんは腐女子になっていた。カップリングまで把握している徹底っぷりです。
女子高生AI「りんな」はガチの「おそ松さん」腐女子だった!?

 冗談はともかく、今のところ人間との対話のような判断力を必要とする処理に改善の余地があるものの、将棋や囲碁などのようにディープラーニングが登場したことで飛躍的に性能が向上した例もあるので、新たな技術の登場によりブレイクスルーを迎えるのかもしれません。

いろいろな企業が人工知能開発に注力しています

 さて、ユーザーに罵詈雑言を浴びせたTayを開発したマイクロソフトですが、人工知能の開発を支援する新ソフトを技術者向けに提供すると発表しました。
人工知能開発を支援へ 米マイクロソフト

 また、ヤフーが人工知能により株式を運用する投資信託商品の販売を検討しているこが明らかになっています。銘柄によって70%以上も運用成績が向上し、しかも非常にローコストで運用を行えることをアピールしています。
ヤフー、「ロボット投信」の販売を検討 AIが株式を運用、低コスト化に強み

 日本政府も人工知能の利活用を推進するための議論がはじまり、国家戦略の一環として理化学研究所に人工知能研究センターが新設される模様です。
人工知能で総裁直属組織=月内に議論スタート-自民
理研、AI研究に新拠点 トップに若手東大教授

 Googleが検索結果を向上するために機械学習を取り入れたり、画像分析や音声認識などを個人でも気軽に扱えるようにプラットフォームを公開するなど、この界隈に活気が出ることで私たちに新たな恩恵がもたらされるのではないかと期待しています。

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