G7で中国を批判しながらもEU各国がAIIBから手を引かない訳

 アジアにおけるインフラ整備への資金ニーズに応えることを目的に中国が設立を主導してきたAIIB(アジアインフラ投資銀行)ですが、日米が参加をしないままに創設メンバーになるための期限としていた3月31日が過ぎてしまいました。6月には設立後初の年次総会を開催し、メンバー国の拡大や具体的なインフラ融資案件などを討議する予定のようです。

 日米が主導するADB(アジア開発銀行)では賄いきれない資金ニーズを満たすためのものであると中国はアナウンスしていますが、IMFと世界銀行で実質的に拒否権を持っているアメリカ中心の世界金融体制に不満があったのでは、とも指摘されています。

 日米は参加を見送っていますが、これは中国がAIIBを恣意的に運用するのではないかと懸念しているからだと言われています。米ウォールストリート・ジャーナルが定款の草案を報じましたが、それによれば出資比率に応じて議決権が決まるため中国が実質的に拒否権を持ち、非常勤の理事が電子メールなどで持ち回り決裁するので環境や人権への配慮なく融資が実行される可能性があると言われています。
AIIBの「ワナ」米紙が暴露 中国が“拒否権”握る WSJ「定款」の草案入手

 実際に、本格運用を前に早くもその懸念が間違いではないと思わせる出来事が起きています。香港の正式加盟を承認する方針であるにもかかわらず、台湾に対しては中国財政省を通じた申請が必要であると明言しています。これを受けて、台湾はAIIBへの参加を見送ることを明らかにしています。
台湾は外され、香港は加盟承認へ 中国、AIIBを恣意的運営か
経済分野でも中国の孤立化が加速するのか 台湾、AIIB“不参加”

 イギリスを皮切りにフランス、ドイツなどEU諸国が参加表明したAIIBですが、G7主要7ヶ国外相会合において東シナ海と南シナ海への懸念が盛り込まれた共同声明を採択したことから、別に中国の好き勝手を許したということではないようです。
大使館幹部を呼び出し G7南シナ声明に反発
中国、G7外相声明に「強烈な不満」表明 海洋問題

 また、世界銀行との共同融資案件についての話し合いも進んでおり、これが実現すれば不透明であると批判されているAIIBの融資条件の問題が解決されるのではないかと期待されています。
世銀、中国主導のAIIBと共同融資で合意

 こうなると既存の世界開発金融機関で十分ではないかと思うかもしれません。もちろん、アメリカの影響力の強い既存の機関以外に出資をしたい思惑もあるのかもしれませんが、どうも他にも理由があるようです。
アジアインフラ投資銀行にアメリカが参加できない真の理由

 各国はAIIBへの出資を外貨準備から拠出しますが、サブプライムのジャンク債を使用するのではないかと言われています。各国が出資したジャンク債にアメリカ政府が保証を与えて現金化しろと迫られかねないために、アメリカはAIIBへの参加を見送ったのではないかとの指摘です。AIIBへの参加表明はイギリスがまっさきに声をあげましたが、アメリカがこれに対して強く文句を言えないのもこれが理由なのかもしれません。

 AIIBに関するニュースを見ると、6月末、6月末というキーワードが多く目につくかと思います。これは高利回りの理財商品の決済日が6/26であり、この払い戻しができない場合には企業の連鎖破綻が予想されています。残り2ヶ月あまりですが、注目していきたいと思います。

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