日銀による円高には内需株で対応しましょう

 28日の東京株式市場はとんでもない値動きだったようです。前場は前日のアメリカ市場の値動きを受けて一時281円高の17572円まで上げていましたが、昼休み中に日銀が追加の金融緩和の見送りを発表すると、後場には下げに転じた模様です。高値と安値の値幅は実に919円。新興市場の仕手株のような値動きになっております。

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 市場では追加緩和への期待が高まっていたことから、緩和の見送りで失望売りが膨らんだと言われています。緩和を想定して円を売っていた投資家も多かったことから、昼休みの日銀の発表で一斉に円買いに転じたようで、ドル円相場も111円から108円と3円も円高になっています。記事執筆時点で107円を割りそうになっていますが、だいじょうぶなんでしょうか。
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 日銀は市場とかみ合っていないという厳しい批判もでていますね。以前からG20やIMFなどで「日本、財政出動やっちゃいなYO!」と言われているので、このまま素直に円高が進行するのかは不透明なところです。今回はものすごく極端な値動きをしましたが、大型連休前の手仕舞い売りと重なったのかなと思わなくもありません。連休明けの動向に注目。

日本の株式市場の6割は外国からの資金でできている

 日本人が貯蓄大好きだからか、金融商品に対して知識が乏しいからか、理由はともかく東京株式市場の売買代金の6割はヘッジファンドをはじめとする外国人投資家に占められていると言われています。かつては欧米からの資金が中心でしたが、近年ではオイルマネーを扱う産油国や中国系の政府ファンドなども増えてきており、保有比率も30%を超えてきたことから海外資本の影響力が大きくなってきています。これがなにを意味するのかというと、株式市場が為替相場に大きく影響を受けるということです。
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 海外投資家は円で生活しているわけではないので、日本株を買いたいと思ったら自国通貨を売って円を買わなければなりません。円を手に入れたら、将来収益を上げてくれそうな銘柄を選んで購入し、値上がりするまで待ちます。ここで円高になるとどうなるでしょう?

 一般的に、各国の中央銀行は為替が過度に変動しないように通貨価値を一定にしようと努力しています。しかし、今回のように突発的な事故で(市場では日銀のミスであると指摘されていますが)円の価値が急激に上昇すると、海外投資家からは円で持っている株資産の価値が膨らんだように見えます。

 価値が上昇して利益が出れば当然利確しますので、円が上がると同時に株が値下がりするわけです。ちなみに海外投資家の売買動向については、東証や株式情報サイトなどで公表されているので株取引の判断材料として参考にすることができます。
投資部門別売買状況
外資系動向

 余談ですが、円高で株が値下がりすると「輸出関連銘柄の収益悪化が懸念されて」といった報道を目にすることがあるかと思います。もちろん、円高は輸出関連企業にとって収益の悪化を引き起こすものですが、みずほ総合研究所の発表によれば、日本の産業全体で見れば円高メリット企業と円安メリット企業の割合は等しいとされています。

 日経225採用銘柄で言えば、円安メリット企業の割合がいくらか上回っているようですが、円高で株式市場全体が値を下げる理由としては少し弱い気がしますが、どうなんでしょうね。
10の図表で読む「円高と円安、どちらが得か」

円高に備えて円高メリット銘柄に注目

 日本の財政出動の期待が高まっているので、このまま円高になるかはわからないとは申しましたが、昨夜にアメリカの商務省から発表された個人消費、設備投資、輸出の数字が悪かったことから、早期利上げの可能性が後退しています。雇用が底堅いのでいずれは成長軌道に戻るとの見方が強いようですが、短期的には円高の傾向が続くと思われます。
米成長率0.5%に急減速 1~3月、設備投資・輸出減

 円高のメリットを享受する銘柄というのは輸入依存度の高い企業であります。原材料や製品などの仕入れコストが低下するため、業績押し上げ要因となるからです。ディフェンシブ銘柄とか内需株などとも呼ばれたりします。

 そこでざっとではありますが、円高の際に株高になりそうな業種と企業を調べてみました。なお、ちゃんとした財務分析を行っていないので、株を買う場合には事前に確認するようにお願いします。

卸売業・小売業

 円高になれば海外から輸入する製品価格が円換算で安くなるので、仕入れコストを低減することができます。代表的な銘柄としてはインテリア家具大手のニトリでしょうか。海外で製造した家具を輸入することで、お値段以上かどうかはともかく、コストを抑えることに成功しています。

 ただし、仕入れコストには円高以外に商品価格の高騰や海外生産拠点の人件費上昇などの要因も関係してくるので、株を購入前にチェックしておくとよいでしょう。特に衣料品は、中国の人件費上昇で生産拠点を東南アジアにシフトするメーカーが増えているので、工場移転に対応しているのか注意が必要です。

 銘柄としては、ファーストリテイリング(9983)、しまむら(8277)、ニトリ(9843)、良品計画(7453)、ニッセン(8248)など。

外食産業

 円高になれば、海外から原材料を輸入している企業はコスト削減によりメリットを受けることになります。近年では、コンビニやファミレスといった外食産業が原材料を海外からの輸入に頼っています。代表的なのが牛丼でお馴染みの(株)吉野家ホールディングスです。吉野家が仕入れている牛肉はアメリカ産ですが、円高になると牛肉の輸入価格が下落することでコストを抑えることができます。

 銘柄としては、(株)吉野家ホールディングス(9861)、神戸物産(3038)、ゼンショー(7550)、マクドナルド(2702)、スターバックス(2712)など。

旅行業

 アベノミクスで円安になってから、海外からの観光客増加がよくニュースとして取り上げられました。中国人の爆買いとか連日報道されていましたよね。あれは円の価値が下がったことで、海外の人からすると日本での旅行費用が安く見えたことによります。

 円高になるとこれが逆転します。日本人から見ると海外への旅行が安くなるわけです。空港で両替すると、為替動向によって両替できる金額が結構変わりますので、実感しやすいかもしれません。ゴールデンウィークに突入しているため、微妙に出遅れ感はありますが、最近の世界的な原油安の影響もあって飛行機の燃料代が安くなっていることも追い風かもしれません。

 銘柄としては、近畿日本ツーリスト(9726)、エイチ・アイ・エス(9603)、ユーラシア旅行(9376)、ニッコウトラベル(9373)など。

農業・畜産業

 先ほど外食産業が原材料を輸入することでコスト削減を行っていると述べているのと矛盾しそうですが、農業に必要な肥料や家畜を育てるための飼料などは輸入に頼っているのが現状です。そういった意味では、日本の食料自給率はそれほど高くないのかもしれません。

 肥料の三大要素はリン、カリウム、窒素ですが、リン鉱石やカリ鉱石は輸入頼みです。窒素製造のために必要な水素を作るにはエネルギーが必要で、現在は天然ガスを主な原料としています。

 銘柄としては、中部飼料(2053)、フィードワン(2060)など。

内需株を買うそのまえに

 今回、かなりいい加減に円高でメリットを受ける銘柄を調べてみましたが、内需株を買う際の注意点をいくつか挙げておきたいと思います。

 円高と言えば、原油や天然ガスの値下がりで電力会社や大手有名食品メーカーを連想するでしょうが、大手企業の場合は株価が日経平均に連動する傾向があるので、円高だからといって値上がりするとは限らないことです。中小型株を狙うほうがよいでしょう。

 また、今回内需株といえば定番である紙・パルプをあえて避けましたが、長引くデフレにより国内需要が縮小傾向であり、円高によりコスト削減に成功しても業績に寄与するのかは不透明であるという懸念があります。特に紙・パルプについては、デフレ以前に電子書籍や新聞・書籍の売り上げ低下も相まって、先行きに不安あります。

 あとは、内需株に限りませんが、値上がりを期待するなら信用買い残が少ない銘柄を選ぶべきでしょう。海外投資家の影響力が増えてきたことを踏まえて、ROEに注目してもよいかと思います。

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