株とか経済の話題を扱います。たまにご飯。
中国の人件費が高騰したことにより日本から中国への直接投資が激減、「世界の工場」の役目を終えたのではないかとネットメディアのZAKZAKが報じています。JETRO(日本貿易振興機構)によると工員の平均月給が北京で約6万4500円、上海で約5万4000円なのですが、工員の生産性を加味した単位労働コストで比較すると、すでに日本で生産したほうがコストがかからない状態になっているようです。
【断末魔の中韓経済】日本から中国への直接投資が激減 人件費高騰で「世界の工場」終焉
年明けの株式市場のバブル崩壊以来、中国経済についてあまり明るいニュースを聞きませんが、中国政府も焦りを隠せないようです。著名な投資家ジョージ・ソロス氏がダボス会議にて「中国経済のハードランディングは不可避」と発言しましたが、これに対して中国の各報道機関ばかりか政府閣僚までもが一大批判キャンペーンを繰り広げております。
記事を書いた評論家の石平氏はこれを「人民裁判式のすさまじい批判キャンペーン」と表現しています。ソロスさん、よっぽど痛いところを突いてしまったんでしょうか。
【石平のChina Watch】ソロス氏に痛いところを突かれた中国 ハードランディング発言に怒り心頭
そんな経済絶賛大不調中の中国ですが、先月サウジアラビア・エジプト・イランと中東の各国を訪問しております。中でもびっくりなのが、エジプトとイランに対する大盤振る舞いです。
4兆円融資をぶち上げ、中東でも見せた中国のバラマキ外交―米メディア
テロで痛手を受けているエジプトに対して中国人観光客の増加を約束したり、中東諸国に対して計200億ドルの投資ファンド設立を約束したりと、結構気合が入っています。さらに、イランとの二国間貿易の規模を向こう10年で6000億ドル(約7兆2000億円)に激増させることで一致しています。
昨年、習近平主席はイギリスを訪問し巨額の投資やビジネス契約などをまとめたりしましたが、そのときの総額が7兆円だったことを考えても、今回の中東訪問にかなりの力を入れていたと考えて間違いないでしょう。
じゃあ、なんでそこまでして習近平主席が今回の中東訪問に力を入れたのかといえば、まだ予想に過ぎないのですがどうやら石油取引の人民元決済を広めたいという思惑があるようです。
習近平氏が“中東バラマキ”の条件にチラつかせた「石油取引の人民元決済」
現在、国際的な取引・決済に使われる通貨は「ドル」です。国をまたいで原油やガス・小麦・豚肉を買ったり、車や半導体などを売ったりするのに使われる通貨はドルであり、このような通貨のことを「基軸通貨」と呼びます。かつてイギリスが世界最強国家だったときは、基軸通貨はポンドでした。
自国の通貨が基軸通貨であるためには、次のふたつの条件を満たしている必要があります。
まずは軍事力から説明しますが、なんでお金の話に軍が絡んでくるの?というと、例えば経済危機になった国がほかの国からお金を借りてなんとか危機を脱したとします。ここで借りたお金をすんなり返してくれればいいのですが、「無い袖は振れないぴょーんw」とか開き直られたら「借りた金は返せや(#゚Д゚)ゴルァ!!」と最悪の場合には軍隊を繰り出すことになります。借金した人が怖いお兄さん達に追いかけ回されてるのをイメージすればいいかと思います。スケールはもっと大きいですが。
経済力が世界一でなければならない理由は、そういう国の通貨のほうが価値の変動が少なくて安定しているからです。国際的な貿易で商品の代金として使う通貨の価値が大きく変動するようだと実に不便です。
基軸通貨についての説明はこちらがわかりやすいかと。
自国の通貨が基軸通貨であるメリットとして、貿易での取引がとても楽になります。為替レートが変動しても為替変動リスクが無いので、本来なら先物予約などを使ってリスクヘッジをしなければならないのですが、これが必要なくなります。
さらなるメリットとして、貿易赤字を輪転機で刷った自国通貨で支払うことができるようになることです。一般的にお金を刷ると国内がインフレになるものですが、海外に支払ってしまうのでインフレにもなりにくくなります。
その上、貿易黒字として受け取った国は他国の通貨をただ持っていてもどうしようもないので、多くの場合は基軸通貨国の国債で運用することになります。これにより、基軸通貨国は自国の財政赤字をファイナンスすることができる訳です。日本は外貨準備高が世界第2位ですが、これのほとんどをアメリカ国債にて運用しています。
世界的な経済不況による需要不足と、アメリカのシェールオイル技術の発達による過度な増産などにより、原油価格は上昇の兆しを見せません。これにより、中東をはじめとする原油の輸出によって財政をまかなってきた国々は、大変苦しい状況に置かれています。これらの国々に経済援助を持ちかけることと引き換えに、中国が石油の人民元決済を広めようとしているという指摘はあり得ないことではありません。
中国がちゃんとした数字を出していないので、あくまでブルームバーグやフィナンシャルタイムなどの予想に過ぎないのですが、どうも近い将来に中国が純債務国家になってしまうのではないかと言われています。ものすごく簡単に言うと、外国からお金を借りないとやっていけない国になるということです。
国内経済が不調であるためキャピタルフライトにより外貨が急速に引き上げられている中国にとって、財政赤字を埋めるために今から外貨を呼び込むことはかなり難しいことのように思えます。単純に世界経済への影響力を強めたいからという理由なのかもしれませんが、財政赤字をファイナンスするために人民元を基軸通貨化しようとしてもおかしくはありません。
今後も国際取引における人民元決済の動向に注目したいと思います。