株とか経済の話題を扱います。たまにご飯。
21日の午後、新潟県上越市上千原で普通乗用車が炎上、駆け付けた消防により約20分後に鎮火しました。運転していた女性に怪我はなかった模様です。上越警察署によると、女性は直前にセルフ式のガソリンスタンドで乗用車に軽油を給油したとのことで、これが原因でエンジントラブルを起こしたと考えられます。
上越市上千原で乗用車が炎上 ガソリン車に軽油入れる
最近は人件費の削減のためにセルフガソリンスタンドが増えてきましたが、免許取立てだと3種類あるうちのどれを給油したらいいのか迷うのではないでしょうか。いつもは中東の石油情勢がどうだとか、VWの排気ガス不正問題がどうだとか書いている当ブログですが、学生時代にガソリンスタンドでアルバイト経験のある私が給油前の基礎知識を解説したいと思います。
車はエンジンの構造の違いにより、ガソリン車とディーゼル車に分けることができます。ガソリン車にはガソリンを、ディーゼル車には軽油を給油します。もとは同じ石油からできたものなのになぜこのような違いがあるのかというと、作るときの温度の違いからきています。
ガソリンや軽油を作るときは石油を熱して発生した蒸気を採取するのですが、ガソリンの場合は30℃から230℃の間で発生する蒸気を、軽油の場合は140℃から380℃で発生する蒸気から採取されます。このことから、ガソリンは常圧・常温でよく燃え、軽油は高圧・高温でよく燃えるようになります。ガソリン車とディーゼル車はこの特性にあわせて設計されているため、構造が異なる訳です。
これによりなにがかわるのかというと、エネルギー効率に違いが出てきます。沸点が違うということは燃焼温度が違うということなので、ディーゼルエンジンはガソリンより強い圧力をかけて高温で燃焼させることができ、高出力・低燃費となってエネルギー効率がよくなります。パワーが必要なバスやトラック、SUVなどがディーゼルを採用する理由です。
軽油のデメリットは、エンジンを回すために高温・高圧にしなければならないため、振動や騒音が大きいことです。あと、寒さにも弱いです。
ひと口に「ガソリン車」と分類してしまいましたが、ガソリンはさらにハイオクとレギュラーに分類することができます。この違いはオクタン価の違いからきています。オクタン価とは、ガソリンの発火のしにくさを数値で表したものです。
ガソリンエンジンはシリンダー内部でガソリンを燃焼させることで運動エネルギーを取り出しています。このとき、本来の燃焼タイミングよりも前に燃料が自発火してしまうと、エンジンにダメージを与えてしまうことになります。これをノッキングと呼びます。
ノッキングはエンジン内の圧縮が高く、燃焼温度が高い高性能エンジンほど発生しやすいです。パワーが出るということはそれだけエンジンが熱を発生しやすく、燃焼タイミングの前で勝手に発火してしまうためです。
そこで、ガソリンを精製する過程でさまざまな添加剤を混合したりして勝手に発火しないように調整したものがハイオクであり、レギュラーのオクタン価が89~96であるのに対して、ハイオクのオクタン価は96以上となっており、ハイオクのほうが燃えにくくなっています。
ノッキングはパワーのあるエンジンほど発生しやすいと上述しましたが、アウトバーンのような長距離走行をする機会の多い、パワーの必要な外車にハイオクが多いのはこのためです。
上でちょこちょこ書いてしまいましたが、おおよその分類として次のようになります。
ただし、あくまで目安であることに注意してください。ごくまれにレギュラーを入れるトラックやスポーツカーなどもあるので油断大敵です。
よくわからない場合は、燃料タンクのふたの裏に書いてあります。たまにない車もありますが、その場合には説明書で確認してください。レンタカーを借りたときなどは要注意です。
ガソリン車でハイオクとレギュラーを取り違えたからといって、エンジンが壊れるということはありません。ただし、それぞれの油種で性能を発揮するようにエンジンが設計されているので、違う油種を入れることで燃費やパフォーマンスが低下するのは間違いないと思われます。
ガソリンと軽油を間違えた場合は決してエンジンをかけずに、レッカー車やディーラーに連絡するようにしてください。給油前のガソリンや軽油が残っているために多少は走行することが可能なようですが、そのまま走行すると冒頭のようなエンジントラブルを引き起こしてしまうので、すぐにエンジンを止めるようにしてください。
私がガソリンスタンドでアルバイトしていたとき、レギュラーエンジンのトラックに軽油を給油したことがあります。トラックにレギュラーを入れるなんて思わなかったんや・・・。幸い、運ちゃんがエンジンをかける前に気付いてくれたので、燃料を全部抜いてエンジンを洗浄しただけで済みました。アホそうな従業員がいつもと違う油種を入れていたのに気付いてくれたのでしょう。運ちゃん、グッジョブ。
ガソリンスタンドでは、油種間違えを防ぐためにノズルの色が法令により定められているので給油前によく確認するようにしましょう。レギュラー=赤、ハイオク=黄、軽油=緑となっております。
実は、ディーゼルエンジンは灯油を入れても走ることができます。しかし、これは犯罪です。警察は不正な軽油を見分けるために、灯油にクマリンというものを添加しているのでバレます。安いからといって法を犯すことのないように注意しましょう。