AIIBの初投資はシンガポール‐マレーシア高速鉄道か

 安倍政権が力を入れる鉄道インフラ輸出ですが、急激な経済発展による大量輸送可能な交通インフラへの需要が高まるアジアを中心に、2016年も受注競争が過熱する見込みです。

 昨年、インドネシアでは中国に逆転敗北。インドネシアにとって日本は最大の援助国であること、高速鉄道計画が出たころは日本のみが名乗りを上げていたことなどから、比較的楽に受注できるのではないかとの期待があったのですが、インドネシア政府が「中国が提示した条件を検討している」と表明してから流れが一変。

 完成時期が日本より早かったり、中国が鉄道建設の支払いに政府保証をともなわなくてもよい、といった条件が功を奏した模様で、受注に競り負けた結果となりました。日本としてもがんばったのでしょうが、「その値段では無理」と判断したようで、手を引く形になったようです。

 今年に入り、1月21日には中国インドネシアの両国関係者が出席しての起工式が行われたのですが、なんだかスタート前からトラブルの連続となっているようです。必要書類すら提出されていないようで。

中国に騙された! ずさんすぎる高速鉄道計画に大きな後悔ーインドネシア

 日本が新興国にODAを行う場合、ほとんどが相手国政府に保証を求めています。これは、最悪現地の企業が支払えなくなったとしても「かわりに政府が支払ってね」という類のものです。

 今回、インドネシア政府は中国が鉄道を完成させる気がないのではないかと疑っているようで、なんと投資を受ける側が「工事を最後までやらなかったら、中国政府に保証してもらうからな!」という契約書を相手に突きつける前代未聞の展開となっております。

 実は、中国が受注した鉄道工事をほっぽり投げるのは今回がはじめてではありません。2004年頃からフィリピンのマニラ首都圏の鉄道整備の支援を中国が無償資金協力にて行っていましたが、工事の度重なる中断と支援契約の内容の一部に不備・不法な疑いがあることが判明したため、アキノ大統領がこの計画を凍結したことがあります。

日本はフィリピンの鉄道整備を支援、中国の事後処理か

 最終的に、昨年11月に安倍晋三内閣総理大臣とアキノ大統領がマニラで会談を行い、日本の円借款を活用して日本政府が後を引き継ぐ形になりました。

 さらに、現在進行形でタイの鉄道建設事業でもやらかしているようです。当初の計画で総額2296億バーツだったものが、中国は総額5300億バーツ(1兆8000億円)と提案しており、タイのソムキット副首相は「最初に聞いた話と違うから、お前が金を出せや」と表明しています。

中国・タイの鉄道建設に暗雲 タイ側が投資増額を要求

 契約内容については2月に再度話合いを行う予定のようですが、フィリピンのような前例もあり先行き不透明な状況です。

 さて、あちこちの鉄道事業でトラブルを抱えている中国ですが、今度はシンガポール‐マレーシア高速鉄道を重要なプロジェクトと位置づけた模様です。中国メディアはこのプロジェクトがAIIB(アジアインフラ投資銀行)の初仕事になるのではないかと報じており、中国を押さえ込む地政学的な要所でもあることから日本を名指しし、受注競争の重要性を強調しています。

AIIBの「初仕事」は、シンガポール―マレーシア高速鉄道か

 原油価格の低迷により、マレーシア政府が負担できる建設費用は一部に留まるだろうと予測されています。そうなると問題になるのは、AIIBの資金調達能力でしょうね。日米が参加しないAIIBは債券を発行してもジャンク級の格付けしか得ることができないので、資金を集めることが困難です。

 その上、一応世界一の外貨準備高を保有していると言われていますが、すぐに現金化できない事業に投資している可能性があること、中国経済失速により資金が猛烈な勢いで中国から流出していることを考えると、このプロジェクトの費用を援助できるのかが不透明なのではないかと思います。

 サーチナの記事にもあるように、東南アジアで日本が影響力を拡大すると太平洋に進出する出口を日本が押さえ込むことになるので、無茶な条件で事業を引き受けた上で、わざと鉄道建設を頓挫させようとしている可能性もあります。

 この先、ベトナムなどにも鉄道建設計画があり、競争相手は中国だけでなくドイツ・フランス・スペイン・カナダなどもいますので、動向を注視していきたいと思います。

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