株とか経済の話題を扱います。たまにご飯。
日銀のマイナス金利のサプライズ導入により、おととい・昨日と買いの入っていた日経平均株価ですが、原油安を背景とした海外株価の急落などにより、前日比559円43銭安の1万7191円25銭で取引を終了しました。日本円が通貨高に振れたことも東京市場で売り注文が増えた原因のようです。これでサプライズな追加緩和の効果が吹き飛んだことになります。
銀行株や生損保株は軒並み叩き売られており、新興市場の銘柄のような値幅になっております。マイナス金利による収益悪化や国債利回りの運用利益の悪化などを嫌気された模様です。先行してマイナス金利を導入している欧州の銀行と同様に、三菱東京UFJ銀行が大企業などの普通預金に口座手数料を導入することを検討しはじめたようです。
普通預金に企業から口座手数料 三菱UFJ銀検討 マイナス金利受け
中小企業や個人に対しては定期預金の金利引き下げを検討し、口座手数料の導入は見送ると報じられていますが、この先どうなるんでしょうね・・・。黒田日銀総裁は「必要な場合、さらに金利を引き下げるで」とアナウンスしていますので、個人であっても口座手数料が導入されることで、実質のマイナス金利にならないことを祈るばかりです。
先日、国債長期金利が一時0.05%まで低下し過去最低を更新しましたが、8年物国債もマイナス金利に突入していることから、10年物の長期金利がマイナスに突入するのも時間の問題なのかもしれません。財務省の同様に考えているようで、3月に発行予定だった新規の10年物長期国債の募集を中止すると発表しました。募集中止ははじめてだそうです。
さて、収益悪化が心配される銀行・生損保株なのですが、特に心配されているのは預金者から集めたお金を大量の国債により運用している日本郵政グループ3社のようです。資産株として長期保有しようとしていた大量のホルダーから悲鳴が上がっている模様です。
日本郵政とゆうちょ銀行、かんぽ生命保険は2015年11月に東京取引所に上場しましたが、マイナス金利による収益悪化を懸念されてか、とうとう上場来安値を更新してしまいました。ゆうちょ銀行に至っては公開価格まで下回っています。ゆうちょ銀行とかんぽ生命の国債保有額が約150兆円ですからね・・・。無理もない。この保有額は日銀に次ぐ大きさだそうです。
日本郵政:国債保有額を24兆円削減、民営化後で最大-15年3月期
3大メガバンクなども国債を大量に保有しているのですが、ゆうちょ銀行が他の銀行に比べてことさらに叩き売られる理由は、ゆうちょ銀行が融資業務を行っていないからだと思われます。
ゆうちょ銀、全国展開の巨大銀行が上場、地銀に大きな変革迫るか (1)
ゆうちょ銀行が貸出業務をはじめるには金融庁や総務省の認可が必要です。これには日本郵政がゆうちょ銀行の株式を50%以上売却しなければならないという決まりがあり、今回のIPOで放出された発行済み株式数は約10%です。郵政民営化の進め方を議論する郵政民営化委員会などの判断次第で貸出業務に進出できる時期は前後する可能性がありますが、マイナス金利になったからといって融資により収益をアップすることができません。
また、日本郵政がゆうちょ銀行株を売却すればルール上は融資業務に進出することができるのですが、地方銀行などとの競争激化が予想されることから、全国銀行協会が「民業圧迫である」という至極もっともな批判をしています。なにしろ半端ない資金力と全国を網羅する営業基盤を持っていますからね・・・。地銀からすれば脅威になるのも無理はないです。
また、日本の銀行と信用金庫等の資金供給能力は民間の資金需要を大きく上回っているので、新規に参入しても新たに貸し出せる相手がいるか非常に不透明です。その上、今まで融資業務を行ってこなかったゆうちょ銀行には、信用審査や債権管理といった貸出に関するノウハウがありません。他の銀行と提携するという手段もなくはないのですが、こちらのリンク先では「YOU、投資会社を目指しちゃいなよ!」と指摘されています。
ゆうちょ銀行もどうやらそのつもりらしく、中期経営計画において「安定的な調達構造の下、国債をベースとしつつ、一層の運用収益を求めて、運用戦略を高度化」することとしています。その証拠に、上場前から少しずつ国債の保有額を減らして外国債券を増やしており、外部から高度な資産運用を行う専門家を数十人規模で採用しているようです。
今のところ、株式運用に割り当ててはいないようですが、GPIFの例のように運用方針が変わることによって株式運用による収益の増加が期待できます。また、年明けからの東京市場の下支えとしても期待できるのではないでしょうか。ものすごい資金量な訳ですし。
・・・。もちろん、運用損がでないなんて言いませんけど。