中国は石油取引から基軸通貨化を狙っているのか?

 2014年の後半から下落が続いている原油価格ですが、IEA(国際エネルギー機関)が底を打ったのではないかとの見解を示しました。米国とOPEC非加盟国の生産が急速に減少しはじめているほか、経済解除されたイランの供給増加がそれほど大規模でないことが背景だとしています。

原油価格が底打ちの可能性、今年の需要の伸びは据え置き=IEA

 これでひと安心かと思えば、今度はOPEC(石油加盟国機構)がOPEC産原油に対する需要見通しを前月から下方修正しており、先行きが不透明な状況になっております。

訂正:OPEC産原油需要予想下方修正、供給過多悪化の見通し=月報

 アメリカで生産コストが低下したことと、石油会社でリスクヘッジが進み損失を出しながらも生産が続けられることようになったことが理由のようです。

 この状況に産油国も手をこまねいている訳ではなく、サウジ・ベネズエラ・カタールのOPEC3か国とロシアは主要産油国の協調を条件に、生産量を調整することで原油安に歯止めをかけるつもりのようです。これに対し、イランは「日量400万バレルに達してから従う」という条件付きで参加を表明しています。

原油増産凍結、イランが条件付きで参加意向

 イランは核開発問題に絡む経済制裁が1月に解除されたのを受けて増産に乗り出したばかりであり、多額の財政赤字を抱えるイラン政府としては引き下がることができないものと思われます。なお、原油増産の調整について他の主要産油国が追随するかは不透明な模様です。

 さて、今や世界一の産油国であるアメリカも長引く原油価格安を打開するべく、40年ぶりに原油の輸出を解禁することにしたようです。産経新聞の報道によれば、ロシアやイランに対する経済制裁という意味合いもあるようです。原油相場ヒエッヒエですよ、アメリカさん。

今や世界一の産油国・米国がついに原油輸出を40年ぶりに解禁 その狙いとは…
米国産原油・輸出解禁の価格インパクト
原油市場は弱肉強食の「ガチバトル」に突入

 日本への輸出第1号はコスモ石油が買い付けた30万バレルで、来月末にも日本に到着する予定です。コスモ石油の中山真志原油外航部長によれば、様々な地域から調達することで、その都度安い原油を選択できるようになることを期待しているようです。石油関連企業の倒産が相次ぐアメリカにとっても、輸出に期待をしているようです。

40年ぶりに…アメリカが原油輸出 日本へ出荷

 経済産業省の石油統計によれば、2014年時点で石油輸入元の実に83.1%が中東地域からになっており、最近の南シナ海での中国のやんちゃぶりを考えれば、海路の安全性確保は重要な課題になっています。エネルギー安全保障的にアメリカからの輸入がそれらの問題の解決に一役買ってくれるのではないかと期待できます。

日本の原油輸入元をグラフ化してみる(石油統計版)(2015年)(最新)

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原油価格の下落によりダメージを受けるロシア

 税収の多くが石油・ガスの収入に頼っているロシアですが、ここ最近の原油価格の下落で政府財政に打撃を受けたことで、通貨ルーブルの下落が止まらない状態になっています。原油とルーブルのチャートを並べてみると、しっかりとリンクしています。

 ルーブルの暴落により、外貨建ての住宅ローンを組んでいた人たちが借金の返済が困難になり、家を失うことを恐れた市民が銀行に押し掛ける騒ぎとなっているようです。ローン利用者の証言によれば、銀行がドル建てでなければローンを組めないと言っていたようです。どんだけルーブルは信用ないんだよ・・・。

露ルーブル暴落 外貨建てローン利用者怒る
「日本でも中国でもいいから支援くれ」 制裁で外貨建てローン膨れ、モスクワで市民ら怒りの集会

 「日本でも中国でもいいから人道支援をしてくれ」と訴えた女性の証言を産経新聞は報じていますが、中国がロシアと通貨スワップ取引を行うことでロシア政府財政をサポートするつもりのようです。両国は2014年10月にスワップ協定を結んでいます。

中国とロシア、通貨スワップ取引の準備整う 1500億元相当

 今年1月に習近平氏が中東を訪問した際に、各国に経済援助や投資をすることと引き換えに、原油取引の決済通貨に人民元を加えるよう提案していたのではないかと指摘しています。現在、ロシア産の原油を一番多く輸入しているのは中国であり、中東と同様の提案をロシアにもするつもりなのかもしれません。

習近平氏が“中東バラマキ”の条件にチラつかせた「石油取引の人民元決済」
中国 ロシア産石油の最大の輸入国に

 あと数年で純債務国家に転落するのではないかと言われている中国ですが、原油の決済通貨として人民元を使うことをきっかけに基軸通貨を目指しているのではないかとの指摘もあります。通貨としての信用に欠けている感は否めませんが、国際決済通貨の4位に浮上していることもあり、財政赤字問題を解決するために一発逆転を狙っている可能性をは捨てきることはできないと思います。

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